黒田です。経理のお話を、ひとつだけ。

実は2026年に入ってから、個人事業主の方に関わる法律が立て続けに変わっているんです。私もよく迷ってしまうのですが、整理してみたらぜんぶ「個人事業主を守る方向」の改正でした。

「むずかしそう」と思って後回しにしている方も多いと思うので、できるだけ具体的に、噛み砕いてお伝えしますね。

※ 2026年5月時点の情報です。細かい運用は所轄の労働基準監督署や公正取引委員会、税理士事務所への確認をおすすめします。

何が変わったのか(三つの法律をひとつずつ)

2026年に動いた法律は、大きく分けて三つあります。

ひとつ目:取適法(とりてきほう)── 2026年1月1日 施行

これまで「下請法」と呼ばれていた法律が、「中小受託取引適正化法」、略して「取適法」に名前を変えました。

名前が変わっただけではなくて、中身もけっこう動いています。

  • 「親事業者・下請事業者」という呼び方が 「委託事業者・中小受託事業者」 に変わりました
  • これまでは発注者の資本金が小さいと法律の保護を受けられないケースがあったのですが、資本金にかかわらずすべての発注者が規制対象になりました
  • 手形払いが原則禁止になりました
  • 一方的な代金決定の禁止、代金減額時の遅延利息など、ルールが追加されました

個人事業主の方にとっては、これまで「うちは小さい会社だから法律の対象外」と言われていた発注先にも、ルールが及ぶようになった、という変化です。

ふたつ目:フリーランス新法 ── 2026年1月1日に解釈ガイドライン改正

フリーランス新法そのものは 2024年11月1日に施行済み なのですが、2026年1月1日から運用ルール(解釈ガイドライン)が改正されています。

特に大事なのは、「振込手数料をフリーランス側に負担させること」が、合意があっても『報酬の減額』にあたると明確化された点です。

これまで「振込手数料を引いて振り込みますね」と言われて、なんとなく受け入れていた方も多いと思うのですが、2026年1月以降は、それは原則アウトという扱いになりました。

もうひとつ大事な、すでに動いているルールが 「60日ルール」 です。

  • 発注者は、納品物を受け取った日から 60日以内 のできるだけ短い期間で報酬の支払期日を決めて、その期日内に支払う義務があります
  • 「月末締め翌々月払い」のような長すぎる支払いサイトは、見直しが必要な場合があります

みっつ目:改正労働安全衛生法 ── 2026年4月1日 施行

こちらは「働く場所での安全」に関する法律です。

  • 労働者と同じ現場で働くフリーランスや一人親方に対して、発注者側に安全衛生対策の義務が生まれました
  • 2027年1月からは、フリーランスが業務中にケガをして休業4日以上になった場合、発注者が労働基準監督署に報告する義務も発生します

ヘアメイク・カメラマン・大工さん・イベントスタッフなど、「現場に入ってお仕事をする方」に特に関係するお話です。

なぜ、まとめて変わったのか

ここからは私の見方も入りますので、ひとつの参考としてお読みくださいね。

長らく日本では、個人事業主の方は 「会社員と比べて守られていない」 という状態でした。仕事中にケガをしても労災が出ない、報酬が支払われなくても泣き寝入り、というお話を、私もよく耳にしてきました。

そこに、2024年11月の 労災保険の特別加入制度の拡大(すべてのフリーランスが任意で労災に加入できるようになりました)と、フリーランス新法が同時に動き始めて、2026年に取適法・改正安衛法と続いた、という流れなんですよね。

つまり、「個人で働く方の権利を、ちゃんと整える」 という方向に、国全体が動いているということだと思います。

知らないと損する状況になっているのは事実ですが、裏を返すと、知っていれば守ってもらえる仕組みができてきた、ということでもあります。

個人事業主として、まず何をするか

「読んだけど結局何をすればいいの?」となりやすい話題なので、ここを丁寧にお伝えしますね。

肩の力を抜いて、ひとつずつでいいので、できるところから進めていきましょう。

1. 業務委託契約書・発注書を見直す

これがいちばん大事です。具体的には、以下の項目が書面(または契約書のPDF・メール・チャットの記録)に残っているかを確認してみてください。

  • 業務の内容
  • 納品日
  • 報酬の額
  • 支払期日(受領日から60日以内かどうか)
  • 振込手数料はどちら負担か

「口約束だけ」「金額がメールに書かれていない」という状態があれば、発注者にお願いして書面化してもらうのが安心です。法律で義務化されている範囲なので、お願いしても角が立つことはありません。

2. 振込手数料の扱いを、発注者と確認する

2026年1月以降、振込手数料を一方的にフリーランス側の負担にすることは、原則として「報酬の減額」にあたる扱いになりました。

例えば、報酬が10万円で振込手数料が660円引かれて振り込まれていた場合、その660円は本来発注者が負担すべきもの、という考え方になります。

「これまでずっとこの形だったから」とそのままにしている方も多いと思うのですが、新しい契約・新しい案件から少しずつ見直していくのが現実的だと思います。

3. 労災保険の特別加入を検討する

2024年11月から、すべてのフリーランスが任意で労災保険に加入できるようになりました。

特に「現場に入ってお仕事をされる方」── ヘアメイクさん、カメラマンさん、大工さん、配達のお仕事をされる方など ── は、ケガのリスクと向き合うお仕事です。労災に入っていれば、お仕事中のケガや通勤中のケガがカバーされます。

加入は 特別加入団体 を通じて行います。保険料は「給付基礎日額」と「保険料率」で決まるので、ご自身のお仕事の収入水準に合わせて選べる仕組みです。

「フリーランス 労災 特別加入団体」で検索していただくと、いくつもの団体が見つかるので、補償内容と保険料を比べてみてくださいね。

4. 支払いが遅れたとき、相談先を知っておく

これがいちばんお伝えしたいことかもしれません。

「報酬が支払われない」「契約と違う減額をされた」というときの相談先は、公正取引委員会厚生労働省です。フリーランス新法・取適法に違反する取引については、相談を受け付けています。

「相談したら、お仕事をもらえなくなりそうで怖い」というお気持ちは、私もよく分かります。でも、ご自身の身を守るための相談先があるということは、頭の片隅に置いておかれるのがいいと思います。

まとめ

2026年に動いた個人事業主まわりの法律を、もう一度だけ整理しますね。

  • 取適法(2026年1月):発注者の規模にかかわらずルールが及ぶ・手形払い原則禁止
  • フリーランス新法ガイドライン改正(2026年1月):振込手数料の一方的負担はNG・60日支払いルール(本体は2024年11月施行済み)
  • 改正安衛法(2026年4月):現場でのフリーランスの安全衛生対策が発注者の義務に

「ぜんぶいっぺんにやらないと」と思わなくて大丈夫です。最初の一歩だけ、やってみてくださいね。

おすすめは、まず 手元の契約書か発注書を1枚見返してみる こと。支払期日と振込手数料の扱いだけ、目を通してみていただけたらと思います。

それだけでも、「自分のお仕事はちゃんと守られているかな」と気にかける習慣ができてきます。

迷ったら、所轄の労働基準監督署や公正取引委員会、税理士事務所への確認をおすすめします。

私もまだ、個別のケースで判断に迷うことが多いので、無理せず、専門家にお尋ねしてみてくださいね。